献灯使

私達の世代だと、遣唐使?って思うけど

これは多和田葉子さんの小説です。

 

献灯使 (講談社文庫)

献灯使 (講談社文庫)

 

 

今年一番、ガツーンときた小説。

装丁も好みですけど。

表題作の他に、短編がいくつか収録されています。

 

設定は未来の日本。

老人が100歳をこえても元気なのに

子どもたちは、自分の足で歩くことも

ままならないほど、弱体化している。

鎖国しており、外来語も禁止。

外国を思わせる話もできない。

東京23区は長く住んでいると複合的な危険にさらされる地区に指定され、

23区を去る人が増え

奥多摩から長野に目を向ける人が増えた。

 

主人公の義郎は、曾孫の無名と暮らしている。

犬は、犬貸し家にしかいないため、

犬とジョギングをするため毎朝義郎は

犬貸し家で犬を借りる。

(もうこの世界には雑種犬はいない)

 

無名は歯が脆いので、パンは液体に浸さなければ食べられない。

タンポポは花びらの長さが10cmにもなり、菊のようになった。

近い未来、外でピクニックもできなくなるだろうから、部屋を青いペンキで塗ろうかと考える。

 

もう、頭がおかしくなりそうだが、

読んでいるとほんとにこんな世界が来るかもしれないと思ってくる。

 

東日本大震災で、福島第一原子力発電所から

多くの放射性物質が飛散し、

汚染された日本の未来である。

 

今もまだ、福島第一原子力発電所では

被爆を覚悟での廃炉作業が続いているのだろうが、私たちはそのことをどのくらい考えているだろうか。

 

危険は去ってはいない。

日本の未来を考えるのなら、

ぜひこの本を読んでほしい。

 

 

多くの事件や事故がおこる小説よりも

日常が変わってしまうことを知らしめる小説のほうが恐ろしいと。